カピバラとは
学術名『Hydrochoerus hydrochaeris』
南アメリカ原産の巨大なテンジクネズミです。 最大の齧歯動物であり、ハムスターやモルモットの仲間でもあります。 生息域は草木の生い茂る場所に生息し、水域の近くに住んでいます。 また人間の生活域、街中の公園や下水道、農場にも及びます。 一般的に10〜20の個体で一夫多妻のグループ形成をしています。
名前の語源
かつて南米大陸に先住していた。トゥピ族のグアラニー語 『Tupika’apiûara』 kaá(葉)+píi(細い)+ú(食べる)+ ara(動作主名詞の接尾)に由来します。 グアラニー語はボリビア、パラグアイではスペイン語と共に公用語 アルゼンチン、ブラジル南西部など近隣諸国の住民の間でも用いられている。 また、『草原の主』『草原の覇者』という意味もあり名前の由来は諸説あります。
和名、中国名
カピバラは和名で『鬼天竺鼠』(オニテンジクネズミ)と呼ばれます。 『鬼』とは“大きい”という意味です。 モルモットは『天竺鼠』『テンジクネズミ』 学術名『Hydrochaeris』はギリシャ語で水の豚を意味します。 漢名、中国語圏では『水豚』?「シュイトゥン」と発音します。
カピバラの種類
学術名『Hydrochoerus hydrochaeris』
南米にはカピバラが2種類います。一般的なカピバラは カピバラ(Hydrochoerus hydrochaeris) と呼ばれ、ブラジルをはじめ、アルゼンチン、ボリビアなど南米の広い地域に分布しています。一方、レッサーカピバラ(ヒメカピバラ、Hydrochoerus isthmius) は、パナマ東部、コロンビア北西部、ベネズエラ北西部の限られた地域にのみ生息する小型の種類です
カピバラの大きさ
大人のカピバラは体長100〜134 cm。体高50〜60 cm 。通常、体重は40〜70 kg ベネズエラでの平均は48.9 kgです。 記録された上位の体重は、ブラジルの野生のメスで91kg 。ウルグアイの野生のオスで73.5 kgです。
各国のカピバラの呼び方
| アメリカ、 イギリス、英語圏 |
capybara |
|---|---|
| スペイン | capibara |
| パナマ | poncho |
| ベネズエラ | piropiro, chiguire |
| ギニア | watras |
| コロンビア | ponche, chiguiro |
| スリナム | kapoewa |
| エクアドル | capibara |
| ペルー | ronsoco |
| フランス領ギアナ | cabiai |
| ブラジル | capivara |
| ボリビア | capibara |
| パラグアイ | carpincho |
| ウルグアイ | carpincho |
| アルゼンチン | carpincho |
生息域
北部はパナマ。南米大陸ではチリを除くほぼすべての国で見られると 学術的には言われています。ところが、チリでもSNSの発達でスマホのカメラでカピバラが撮影されており生息している事が疑われています。
湖、川、沼地、池、沼地などの水域の近くの密林地帯や、氾濫したサバンナや熱帯雨林の川沿いに生息しています。 カピバラを頻繁に発見できる場所としては牧場もあります。行動範囲は平均10ヘクタールの縄張りを持っています。 習慣行動で日常を過ごしています。
※10ヘクタールとは100,000平方メートル。正方形であるとすれば、一辺が約316.23mの正方形
ブラジル パンタナール湿原
雨季 10月〜3月
乾季 4月〜9月
食事
カピバラは草食動物です。草や水生植物や、果物や木の樹皮を食べます。 フルールも好んで食べます。甘い物が大好き。自生するパパイアを食べている光景も見ました。雨季と乾季によって食べる植物が変わります。雨季(夏)稲科のヨシを好んで多く食べます。乾季(冬)には木の根っこや限られた食物を乾燥地帯の中で探して食べます。
食事の方法
カピバラの顎の動きは左右ではなく前後にすりつぶして食べ物をすり潰します。 カピバラの前歯は、草を食べることによる摩耗を補うために伸び続けます。 カピバラの腸内は繊細でとても多くの微生物が生息していています。腸内細菌の供給源として食糞行為をします。カピバラがゆったりと睡眠に多くの時間を費やす理由は食べ物を消化させるためです。
寿命、天敵
国内飼育下での寿命は平均 8〜10年です。
天敵はジャガー、ピューマ、オセロット、ヤブイヌ、ワシ(猛禽類)、カイマン、アナコンダ(爬虫類)
野生では4〜6年程度の寿命です。
この画像は埼玉県の大宮公園小動物園(さいたま市)で飼育されていたジャガーのメスで14歳1カ月です。
組織社会性
カピバラは高い社会性を持つ動物で、単独で行動することもありますが、一般的には群れで生活しています。
通常の群れは10~20頭ほどで構成され、1頭の優位なオスを中心に、複数のメスや子どもたちが集まる“一夫多妻型”の社会を形成します。群れには2~4頭ほどの成体オス、4~7頭ほどの成体メス、そして多くの幼体が含まれます。
乾季には水辺へ集まる習性が強くなり、水源の限られた地域では50~100頭以上の大きな群れが形成されることもあります。
また、カピバラは仲間同士のつながりや順位関係を重視する動物でもあります。
危険を察知すると、犬のように「ヴォヴォ」と鳴いたり、歯を打ち鳴らして「カッカッ」という警戒音を出し、群れへ危険を伝えます。
環境による群れの違い
カピバラの群れの形は、生息環境によっても大きく変化します。
見通しの良い開けた湿地では、比較的大きな群れを作る傾向があります。
周囲を見渡しやすいため、複数の個体が集まり、互いに警戒しながら生活できます。
一方で、草木の密集した密林地帯では、小規模な群れや分散した行動が多く見られます。
視界が限られる環境では、群れが大きすぎると互いの位置把握が難しくなるためです。
このように、カピバラは環境に応じて群れの大きさや行動を柔軟に変化させながら暮らしています。
カピバラの繁殖と子育て
カピバラは高い繁殖力を持つ動物で、1回の出産で1~8頭ほどの子どもを産みます。
発情期になると、メスの体の匂いが変化し、オスはその匂いを頼りにメスを追いかけます。
野生のカピバラは、基本的に水中で交尾を行います。
もしメスが特定のオスを受け入れたくない場合には、水の中へ沈んだり、水辺から離れることで距離を取ります。
一方、日本国内など飼育環境下では、陸上で繁殖行動が見られることもあります。
繁殖の時期
カピバラは生後1~1年半ほどで性成熟します。
妊娠期間は約130~150日。
環境条件が整えば1年中繁殖することが可能ですが、野生では特に雨季の始まりに繁殖が活発になります。
繁殖のピーク時期は地域によって異なり、
- ベネズエラ北部では4~5月頃
- ブラジル中部・パンタナール湿原では10~11月頃
に多く見られます。
子育て
出産は陸上で行われます。
生まれたばかりの子どもは、すぐに歩くことができ、群れと一緒に行動します。
また、生後1週間ほどで草を食べ始めます。
ただし、完全に母乳を卒業する「離乳」までは約16週間ほどかかり、その間は実の母親だけでなく、群れの他のメスから授乳を受けることもあります。
このように、カピバラは群れ全体で子どもを育てる傾向がある動物です。
カピバラの行動と運動能力
カピバラは「いつも寝ている」「のんびりしている」ように見えることが多い動物です。しかし、これは怠けているわけではなく、草を中心とした食べ物を消化するために必要な時間でもあります。
活動時間は「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」と呼ばれ、早朝や夕方など、薄暗い時間帯に特に活発になります。
野生では、人間の生活圏に近いカピバラほど、街灯などの明かりを利用しながら夜間に行動する姿も見られます。
一方で、見た目とは違い、カピバラは非常に高い運動能力を持っています。危険を感じると素早く走り、水中へ逃げ込むことができます。
泳ぎも得意で、長時間水の中に潜ったまま移動することも可能です。
こうした身体能力は、ジャガーやピューマ、アナコンダ、カイマンなどの天敵から身を守るために発達したものと考えられています。
身体特徴
カピバラは鼻、目、耳の位置が一直線上にあります。彼らは水中でも多くの時間を過ごす動物です。そのため鼻、目、耳が一直線上にあることで水面から少し顔を出して天敵であるジャガーやワニなどが襲ってこないか常に見張ることができます。
カピバラのオスのオデコには発達した【モリージョ】と呼ばれる匂腺分泌部分のコブがあります。 フェロモンおよび他の情報化学物質を含む半粘性分泌物を生成します。この匂腺を木や壁面に擦りすけることでステータス、縄張りのマーキング、性的魅力などを示します。
カピバラの鳴き声
カピバラはさまざまな鳴き声を使い分けながら仲間とコミュニケーションを取っています。
リラックスしている時や安心している時には、「キュルルル」という優しい声を出します。
一方で、警戒している時や威嚇する時には、「グォッグォッ」と低い声を出して周囲へ危険を伝えます。
カピバラの歯
カピバラはネズミやモルモットの仲間である「齧歯類(げっしるい)」です。そのため、大きく発達した前歯を持っています。
この前歯を使って、草や硬い野菜などをボリボリと噛んで食べます。
カピバラの歯は一生伸び続けるため、木や石、硬い植物などを噛みながら長さを調整しています。
また、この鋭い前歯は、野生では天敵から身を守るための大切な武器にもなっています。
カピバラの足と泳ぐ力
カピバラの足には水かきがついています。
前足の指は4本、後ろ足の指は3本あり、この水かきを使って水の中をスムーズに泳ぐことができます。
泳ぎがとても得意で、長時間水中に潜ったまま移動することも可能です。
野生では、ジャガーやカイマンなどの天敵が近づくと、一気に水の中へ飛び込んで逃げ込みます。
水辺はカピバラにとって大切な避難場所でもあります。
また、湿地やぬかるんだ地面でもしっかり踏ん張れる足をしており、陸上では見た目以上に素早く走ることができます。
カピバラの毛
カピバラの毛は、見た目の印象とは違い、とても硬くゴワゴワしています。
「ふわふわしていそう」と思われることも多いですが、実際には毛はまばらに生えており、触り心地は枯れた芝生のようだと言われることもあります。
一方で、生まれたばかりの子どもは柔らかくふわふわした毛に包まれています。この柔らかな毛は、生後1年ほどまで比較的残っています。
カピバラの毛は、水辺で暮らすために適した特徴を持っています。
毛がまばらで硬いため、水から上がったあとに体を振るだけで、水分を素早く落とすことができます。
これは、泳いだあとにすぐ移動したり、天敵から素早く逃げるために役立っています。
見た目はのんびりしていても、カピバラの体には野生で生き抜くための工夫がたくさん詰まっています。
カピバラとしっぽ
カピバラはネズミやモルモットの仲間である「齧歯類(げっしるい)」ですが、しっぽは見当たりません。
見た目では分かりにくいですが、お尻のあたりには、しっぽがあった名残とされる尾てい骨の小さな突起があります。
ふれあいができる施設では、優しくお尻付近を触ることで、その感触を感じられることがあります。
また、この尾てい骨の周辺は、多くのカピバラが触られて気持ちよさそうにする場所でもあります。
カピバラ同士でも体を寄せ合ったり触れ合ったりすることが多く、こうした触れ合いは安心感やコミュニケーションにもつながっていると考えられています。
カピバラの体毛に起きる変化
カピバラは、刺激を感じた時や興奮状態のときに体毛が「ボワッ」と逆立つことがあります。
野生では、他の動物が体に触れたり、鳥が背中に止まった時にも体毛が逆立つ様子が見られます。
特に、鳥がカピバラの背中に乗る姿は南米ではよく見られる光景です。これは、鳥がカピバラの体についたノミやダニなどの寄生虫を食べているためだと考えられています。
カピバラにとっては体をきれいにしてもらうことにつながり、鳥にとっては食べ物を得られるため、お互いに利益のある関係になっています。
カピバラと人間社会
カピバラは現在、国際的には「絶滅危惧種」には分類されておらず、南米の多くの地域で個体数は比較的安定しているとされています。
しかし一部の地域では、狩猟や開発の影響によって数が減少している場所もあります。
人との関わり
南米では古くから、カピバラは人間と深く関わってきました。
地域によっては、肉や皮を利用するために狩猟や養殖が行われています。
特にベネズエラなどでは、カピバラの肉が重要なタンパク源として扱われることもあります。
また、カトリック文化圏では、四旬節(しじゅんせつ)や聖週間に肉食を控える習慣がありますが、歴史的にはカピバラを食べることが認められた地域もありました。
一方で、農地では作物や放牧地へ入り込むことから、害獣として扱われる場合もあります。
都市に適応するカピバラ
カピバラは、人間社会への適応力が非常に高い動物です。
現在の南米では、都市公園、川辺、住宅地近くなど、人の暮らしに近い環境で生活する姿も多く見られます。
ウルグアイでは2ペソ硬貨にカピバラが描かれており、南米の人々にとって身近な存在であることが分かります。
また、動物園など飼育環境では10年以上生きる個体も多く、野生でも安全な都市環境へ適応したことで、寿命が延びている地域があると考えられています。
人との接触について
カピバラは比較的おとなしく、人に慣れる個体もいます。
そのため、ペットとして飼育されたり、観光施設などで餌やり体験が行われることもあります。
ただし、野生個体にはダニなどの寄生虫が付着している場合があり、一部のダニは感染症を媒介する可能性があります。
そのため、野生のカピバラとの過度な接触には注意が必要です。
血統管理と保全
動物園では、カピバラの血統管理も行われています。
ヨーロッパ動物園水族館協会(EAZA)では、飼育されているカピバラの出生、死亡、移動、血縁関係などを記録する「血統登録簿」が管理されています。
これは近親交配を防ぎ、健康な個体群を維持するためです。
日本国内でも近年は血統管理が重視されており、動物園同士で協力しながら繁殖計画が進められています。
